多汗症の部位

  

掌蹠多汗症

ワキガの人に多い腋窩多汗症ですが、他にもいくつか部分的な多汗症はあります。 手の平に汗をかく掌蹠多汗症が日本では多く見られますが、これは掌が一日の大半の時間湿ってしまうので、手先を使った細かい作業がしにくくなります。 症状が重い方だと力を入れて握り拳にしたら、それだけで汗が水滴となって床にポタポタを垂れるほどになるようです。 それだけ汗を手にかくと紙を使った作業をするのははばかられますし、飲食店でも「汗は困るよ、汗は」としかめっ面で苦情を言われてしまいそうです。 新聞配達やポスティングのアルバイトをしようとしても、掴んだ箇所が湿気てふやけてしまうのであまり良い顔はされないかもしれません。 休日に読書をしようと文庫本をペラペラめくった際にもページに染みが出来てしまいますし、とにかく紙を扱うことに対して不自由な生活を強いられてしまうでしょう。 夏に岐阜県の山に出掛けてキャンプファイヤーを開催した時にも恒例のフォークダンスで異性の手を握り締めることに躊躇してしまいますし、釣竿をブンと振り回したら汗で滑って竿ごと飛んで行った、なんてパプニングも割とありそうです。 このように普段の生活が不自由なものになるので、掌蹠多汗症は早めに治療したがる患者さんが世界中にいらっしゃるようです。

足蹠多汗症

手の平ではなく足の裏に大量の汗をかく足蹠多汗症もあり、こちらは本気で努力すれば他人には察することができないように生活することも無理ではありません。 ですがやはり不自由なことに変わりはありませんので、速やかに多汗症治療に長けているクリニックに相談することをお勧めします。 どんな不自由さなのかですが、足の裏に汗をたくさんかくので靴を脱いで歩くと足跡が高い確率で残ってしまいます。 靴下を履いていてもその靴下も生暖かい汗でグッショリなので、乾いた床の上を歩くとその痕跡がはっきりと残ってしまうのです。 誰かの家に遊びに行って玄関で靴を脱ぐ、ここまでは問題ないのですがその先はもう絶体絶命、その家が床上浸水でもしていない限り、一歩でも足を踏み入れたら自分の足跡が汚らしく付いてしまいます。 そのことを自分で分かっている人は人の家に遊びに行くことを恐がるようになり、住宅ではない施設でも土足で入れないのなら立ち寄らなくなります。 スリッパを履く、という手段もありますが使用したスリッパは確実に汚れてしまいますし、誰も傷付けることなくこの作戦でいくのならマイスリッパを持参するしかなく、それは不自然でしかありません。 事情を話して理解してもらう行為を事前に行っておけばスムーズに事は運ぶかもしれませんが、そんな相談をする位ならそこへの訪問を諦めたほうが気が楽です。 それに足の裏の汗でちょっと汚れてしまうだけではなく、汗で蒸れ蒸れになったあんよを人の住処で露出するというのも気の滅入ることです。 靴を履いて外出している間は、常に湿った靴の中に同じく湿った靴下を装着した足を入れているわけで、嫌な表現ですが悪臭を熟成しているのです。 足が臭いと喜ぶ男性もいますが、ほとんどの人はその臭いに対して及び腰になり顔を背けようとするでしょう。 ワキガも臭いが気になりますが、足の臭いも同様なのです。 臭いかもしれない、確実に臭いであろう足蹠多汗症の足を人前に晒すのは、とても勇気を要する行為なのはこの疾患に無縁の人でもわかるでしょう。 そんなわけで足蹠多汗症も行動範囲が狭められるのでけっこう不自由なものなのです。

その他の部位

頭に汗をかきやすい頭部の多汗症もありますが、こちらは臭いを気にしたり接触する心配も少ないので、これまで解説してきた多汗症ほど深刻なものではなく、わざわざ多汗症治療を受けようとしない方も多いかもしれません。 とはいえ場面によっては見苦しく感じる人もいますし、足の裏や手の平ほど隠しやすくはない箇所ですので対策が必要な方もいるでしょう。 ただ、額から汗を流していたほうがいい、という人も世の中には少なからずいるでしょうから、捉え方次第かもしれませんね。

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