腋臭症と多汗症

どう違う?

汗を大量に、不自然なまでにかいてしまう多汗症は、同じく汗が原因となる腋臭症と同じように考えられていますが、正確には違った病気になります。 汗をかく病気の多汗症は腋の下だろうが手の平だろうがとめどなく滝のように汗が流れ出てきますが、その汗は無臭かもしれないのです。 ですが腋臭症の場合は流れるほどの汗でなくても、滲み出る程度の汗しかかいていなくてもイヤな臭いを発生させるのです。 この臭いのせいで積極性が失われたり人前ではしゃぐことが出来なくなってしまう患者さんが日本中にいますが、その対処法として多汗症治療を受けられる方もいます。 ふたつは違う病気なのにどうしてそうなるのか、それは汗に関する病気という共通点が両者にはあるからなのでしょう。

腋臭の原因

腋の下の汗が臭いの発生源なら汗をかかないような治療を受ければいい、そのように考えるのは当たり前なのかもしれませんし当人を責められません。 人間にはおよそ400万の汗腺が存在するといわれていますが、全部が同じ種類の汗腺ではなく4分の3にあたる約300万はエクリン腺で、残りの約100万の汗腺はなんとアポクリン腺なのです。 100万のアポクリン腺から噴出される汗は爽やかさを微塵も感じさせないベトつく感触の液体で、これが腋臭の主な原因となります。 アポクリン腺から出てきた汗は皮脂と反応して細菌を発生させ、それが腋臭の元となるのですが、腋の下にしかない汗腺ではありません。 人体に300万あるエクリン腺から流れ出る汗の方はわりと清らかで、大量に衣類に付着してもそんなにイヤな臭いを発することはありません。 とはいえ場所によっては汗をかくことで異臭の原因になることもあるので注意は必要ですし、油断してはいけません。 厚手の靴下を履いてスニーカーの中に突っ込んで、グラウンドを何時間もランニングしたりスライディングすればスニーカーの中は湿度が上がって蒸し暑い状態になり、細菌がみるみる増殖するでしょう。 それを何週間も何ヶ月も繰り返すと、いくら清潔そうな汗しかかいていないとしても異臭を放つスニーカーに変貌するのは時間の問題です。 そう考えると腋臭症の原因になるアポクリン腺からの汗ではなく、エクリン腺からの汗を多汗症治療によって抑えようという試みも納得です。 汗をかく量が少なくなればそれだけ自分の身体から臭いを発生させにくくなることは間違いありませんし、少なからずワキガでお悩みの方の心を落ち着かせる効果はあるような気がしないでもありません。

多汗症の疑い

だいたい腋臭症で苦しんでいる方の多くは多汗症でもあります。 これは腋臭症の人に聞いてみればわかるでしょうが、本人に向かって「あなたってワキガだよね、いや誰かに聞いたりして知ったわけではないよ、私の鋭い勘がそう告げているだけだから気にしないで。ところであなたがワキガなのはほぼ確信しているんだけど、ひょっとして多汗症でもあるのかな?そこはいささか自信がないからこうして訊ねているのだけれど」と質問を投げかけるのは、デリカシーが足りない行為なので控えたほうがいいでしょう。 腋臭症だから多汗症にもなるのか、あるいはその逆なのか、はたまた同時に併発する人が多いのかはここで解き明かす必要もないのでスルーしますが、多汗症はストレスが原因となっているケースが多いのも事実のようです。 そして腋臭症の人は特に夏(サマー)、常習的にストレスを感じています。 汗をかくと自分の体臭が周囲に漂って嫌悪感を抱かれてしまうかもしれない、そう怯えながら夏中震えて過ごすのですが、このストレスのせいでより一層汗を噴出させているかもしれないのですから気の毒な話です。 このように直接ワキガとは関係がない多汗症ですが、汗をかかなくなれば気は楽になれますしそれで腋臭症が改善されることだってありますから、間接的には関わっていると考えてもよいのかもしれません。

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