珍しい病気ではない
多汗症は大量の汗をかきますが、どこにかくかは人それぞれで手の平に物凄く汗をかく人、足の裏に汗をかく人などがいます。 二十歳を過ぎてから、大人の階段を昇ってから、中年に差し掛かって薄毛に悩みだしてから発病するのではなく、子供の頃から多くの汗をかき続けていたというのが一般的な患者さんの姿のようです。 突然ある日を境に汗っかきな体質に変化するのではなく、物心がつく前から日常的に汗を垂れ流していた人こそ本物の多汗症患者なのです。 幼い頃は自分が多汗症だという自覚はありませんが、それは多汗症というのが何か理解していない、自分の体質が人とは異なるなどと夢にも思わないからです。 桜の舞う4月に中学校に入学して青春を本格的に開始する頃、ようやく本人も「あれれ、わたしって多汗症なのかな。隣の席に座っている美形のクラスメイトと比べて流れる汗の量が3倍なんだけど。おまけに隣人、授業中は息苦しそうにしてるし心なしかわたしとの距離を開けようとしているように感じられるし」と自分の体質を自覚するのです。 そこでようやく病院に行って多汗症治療を受けるわけで、それまでは汗をかく量が多くてもそう気にせずに過ごしているのです。 この多汗症は決して珍しい病気ではなく、20~30人にひとりいる位には世界中で確認されていますから、もしも自分がそうだと宣告されてもそう気に病むことはないのですが、本人にしたらそうもいかないでしょう。
体の不調には注意
これが原因で多少風邪をひきやすくはなりそうですが、それ以外は特に身体に異常が発現することはありませんので、肉体的にはそんなに苦しんだり不自由な思いを味わうことは実際の所あまりありません。 虫歯になれば食事に制限がかけられたり、入れ歯やインプラントのお世話になるようだとメンテナンスもしていかなければなりませんが、多汗症はそんな苦労を伴うことはそうそうありません、着替えの頻度は上がりますが。 それよりも問題なのは精神的な部分で、汗をかいているから他の人との接触を極度に嫌がるようになってしまいます。 恋心を抱いている相手の手を握り締めたくても、手の平がジットリと湿っていたら不快感を与えてしまいそうで躊躇してしまいます。 部活動の指導でテニスのフォームを教えるときも、汗をかいているために身体をひっつけて矯正してあげることには消極的になってしまいます。 もしも腋臭症だと自覚しているのなら輪をかけてそういった行為は避けようとするでしょうし、汗をかく運動部を避けて臭いが気にならないようなカレー部なんかに入部して青春を送ることになるでしょう。 このように多汗症だと自覚する人は行動が自発的に制限されてしまいますが、それがこの病気の一番の問題点かもしれません。
意識をしないように・・・
意識すればするほど緊張して一層汗を噴出する、ただでさえ緊張している時には汗が出やすいに多汗症ならその数倍は出てしまいます。 多汗症には全身から汗を流す全身性多汗症と、限られた身体のパーツのみから大量の汗を流す局所性多汗症があります。 緊張して多くの発汗をするのは局所性多汗症によく見られる症状で、全校集会で表彰されたり全校生徒の前で選手宣誓をするようなシーンで、掌が湿ってしまうほど汗をかいたり、顎から雫が滴り落ちるほど額から汗を噴出させてしまいます。 それだけなら肉体的にはケガをしたりウィルスが体内に侵入することに比べたら全然ましなのですが、湿った手で表彰状を掴んだらどうなるか、そんなことを心配してさらに追い込まれ余計に汗をかいてしまう姿は、当人の心情を考えるととても見てはいられません。 汗をかいている自分が他人の目にはどう映っているのか、そう思い悩んでしまうのが多汗症、そして腋臭症の人が持つ大きな問題なのです。